新発見:ほとんどの人が気づかないうつ病の症状(Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf et al., 2016)

メンタル強化

うつ病の人は、悪い出来事が起きるとそれが予測可能だったと考えてしまう。

今回参考した科学論文によると、うつ病の症状として下記が発見された。
我々はうつ病に対してまだまだ未知の部分があるので、この発見は非常に有意義です。

  • 悪い出来事が起きると、うつ病の人はそれが予測可能だったと考えてしまう。
    例えば、何か悪い物事が起こった後に「やっぱりこうなると思った」と思うことです。
    このように、うつ病の人には、悪い出来事に関して、まるで自分が予言者かのごとく振舞う心理的傾向があります。
  • 悪い出来事が起きた時に、「この事態は決して避けることができなかった」と感じてしまう。
    うつ病の人は、悪い出来事に対して無力感を感じています。

この研究結果は、軽度から重度のうつ病に苦しんでいる100人以上の人々を対象にした調査によって明らかになりました。
また、この症状は、重度なうつ病患者ほど発症しやすいことを分かりました。

うつ病の人は、ネガティブな出来事に対して後知恵バイアスを示す

こうした症状は、ある種の後知恵バイアスと言えます。
後知恵バイアスとは、何か物事が起きた後にそれが予測可能だったと考える傾向を指します。
後知恵バイアスは、どんな人にもどんな場面でもいつでも起こり得ます。
後知恵バイアスに関する心理学の実験では、事象の予測が当たると、被験者は発生前よりも予測が強かったと記憶する傾向があることが分かっています。
つまり、そもそも人間は、結果が分かると、結果に合う過去の事象に目が行きがちであるということです。

しかし、後知恵バイアスはうつ病の人に対して非うつ病の人とは異なって作用します。
通常、うつ病ではない人は、後知恵バイアスがポジティブな出来事に対して起こり、ネガティブな出来事には起こらない傾向があります。
一方、うつ病の人々はそれとは逆の傾向を示します。

具体的には、次のように作用します。
幸福感を感じている人は、自分にとってポジティブな結果に繋がる記憶だけを残します。
また同時に、ネガティブな結果は記憶から消去する傾向があります。
一方、うつ病の人は自分にとってネガティブな結果に繋がる記憶を残します。
また同時に、ポジティブな結果は記憶から消去する傾向があります。
さらに、彼らはこうした状況に対して無力感を感じているため、うつの症状がより一層悪化するという負の連鎖に陥ります。

後知恵のバイアスは、うつ病を持つ人々にはネガティブな感情を助長するよう作用し、さらなる負担を強いているようです。
後知恵のバイアスの効果を低減させる有効な手段としては、「起こりえたかもしれない別の事象」を検討することです。
もし後知恵のバイアスを対処したい場合は、ぜひ試してみてください。

参考にした科学論文

研究機関Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf et al.
掲載ジャーナルClinical Psychological Science
研究が発表された年2017
引用元Groß et al., 2017
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