感謝の言葉を伝えると、パートナーとの良好な関係を持続させられます(University of Georgia, 2015)

要点

    研究で分かったことは次の通りです。

  • お互いに感謝の気持ちを表すカップルは、結婚をより質の高いものとして評価しています。
  • 感謝の気持ちを表明することで離婚の可能性も減少します。
  • 感謝の気持ちを伝えることは、言い争いの絶えないカップルには特に有効です。
  • 大切なのは、パートナーに自分が感謝していることを認識してもらうことです。
    その認識の度合いが、相手の結婚生活に対する気持ち、結婚生活に対するコミットの度合い、そして結婚生活をどれくらい続けたいと思うかに直接影響します。

この手法を実践するときのコツ

まずは感謝の気持ちを持つことから始めてみましょう。なかなか感謝の気持ちを持てない人は練習してみましょう。感謝の気持ちは練習することで持てるようになります。しかも、大変なトレーニングは必要ありません。感謝することを練習するうちに、自然な習慣になります。その方法の一つとして感謝の日記を書くというのがあります。夜寝る前にその日に起きたことを思い出し、感謝することがあればそれを書き留めるのです。ある研究では、感謝の日記を書く人々は、何らかの不満を抱えている人々より、よく運動し、医者にかかる回数が少ないことが報告されています。毎日感謝の日記をつける習慣は、健康増進に大変有効であると専門家も提唱しています。

しかし、毎日日記を書くのは面倒だと感じる人も多いでしょう。そういう人には、日々の瞑想の際に感謝の気持ちを抱くこともオススメです。瞑想中に、感謝の気持ちを想起させるものに集中させます。その日に起きたことで感謝すべきことを思い出して、感謝の気持ちを心の中で感じるのです。実際に試して見ると、心がどんどん穏やかになっていくのが分かるはずです。

感謝の気持ちを芽生えさせられたら、次に重要なのはそれをどう伝えるかです。オススメの方法は、相手の目を見ながら感謝の気持ちを伝えることです。誠実な態度で感謝を伝えると、感謝の気持ちが相手に伝わりやすくなります。少しの差で印象が大きく変わるのでぜひ試してみてください。

研究内容の紹介

研究機関University of Georgia
掲載媒体Personal Relationships
研究が発表された年2015
引用元Barton et al., 2015

研究概要

調査では、468組のカップルに、結婚の質と、お互いに感謝の気持ちをどのように表現するかを尋ねました。結果は、感謝の気持ちを伝えているほど良質な関係性を築けていることがわかりました。夫婦が何かストレスや困難に直面している場合でも、互いに感謝しあうことで良い夫婦関係が促進されていました。

また、特に危険なネガティブパターンの1つとして、「押しと引きのコミュニケーション」が挙げられています。押しと引きのコミュニケーションでは、一方が要求、口論、批判をするのに対し、他方は対立を撤回、回避します。妻が要求し、夫がそれを回避するという相互作用は夫婦でよく見られます。ただし、この調査によると、財政的苦痛は、両方のパートナーの需要/撤退の相互作用の総量を増加させ、その結果婚姻関係の質の低下を招く恐れがあることがわかりました。このようにカップルが需要/撤退などの否定的な対立パターンにある場合でも、感謝を伝えることで、この種の相互作用が及ぼす悪影響を相殺または緩衝できます。

多くのカップルが意見の不一致を持っています。そして、そうしたストレス下にあるカップルはより多くの口論をする傾向があります。持続する結婚とそうでない結婚とを分ける重要な要因は、口喧嘩する頻度ではなく、日頃お互いをどのように扱うかにあるようです。

この研究に対する私の見解

感謝することには他にもたくさんの効果が確認されています。人は、本当に感謝している時に、同時に恐怖や怒り、不安などのネガティブな感情を感じることはできません。感謝することで人はストレスに強くなり、気持ちが明るくなり、不安が減り、良く眠れるようになると考えられています。
また、心臓にも良い影響があるということがわかってきました。約200人の心不全患者を対象とした調査では、感謝の気持ちが強い患者は感謝の気持ちが弱い患者より次のようなメリットがあることがわかりました。これらの患者の心不全はステージBといわれる段階で、より深刻なステージCに進むと死亡率が5倍に上がります。それを考慮に入れれば、感謝の気持ちを持つことで命が救われると言っても過言ではないでしょう。

  • 気分が良い
  • よく眠れる
  • 疲労が少ない
  • 心不全を悪化させる炎症も少ない

さらには、科学的研究の結果から感謝の気持ちを持つことによって、様々な体内システムのバランスが取れるということがわかってきました。例えば、下記のような神経伝達物質やホルモンがバランスよく働き、そして血圧や血糖値がコントロールされます。感謝には、精神的にだけでなく、身体的にも多くの好影響あるのです。

  • セロトニンとノルアドレナリン(情動や感情に作用する神経伝達物質)
  • テストステロン(生殖ホルモン)
  • オキシトシン(社会結合ホルモン)
  • ドーパミン(認知と快楽に関連する神経伝達物質)
  • サイトカイン(抗炎症および免疫力)
  • コルチゾール(ストレスホルモン)