今回のテーマは、人に助けてもらう方法についてです。
ある行動をとると、あなたは人から助けてもらえる可能性が2倍上がります。
では、一体どんな行動を取れば良いのでしょうか。
答えは、感謝することです。
感謝すること自体はみなさん普段から行なっている行動だと思いますが、実は助けを得るのに非常に有効です。
今回も科学論文に基づいて、次のトピックをご紹介します。
- 感謝することでどのくらい人から助けてもらいやすくなるのか
- なぜ感謝すると助けてもらえるのか
- 感謝された人は感謝した人以外にも親切になるのか
- 感謝の効果はどのような状況でより強力になるのか
感謝することでどのくらい人から助けてもらいやすくなるのか
今回は、人は感謝されるとどのような影響を受けるかを調査した研究を紹介します。
この研究では、4つの実験を行いました。
最初の調査では、69人の参加者に、架空の学生の求人応募書類をレビューしてその学生にフィードバックしてもらいました。
参加者がメールでフィードバックを送信した後、参加者の半分はその学生から感謝の返事をもらい、残りの半分は特に感謝されませんでした。
その後、その学生から別の求人応募書類についてもレビューを求められました。
その結果、感謝されなかった参加者は32%しか2回目の依頼を手伝わなかったが、感謝された参加者は66%が2回目も手伝いました。
つまり、感謝するかどうかによって、人から手伝ってもらえる確率が2倍も異なるのです。
なぜ感謝すると助けてもらえるのか
研究者たちは、なぜ感謝されるとまた人助けをするのかを調査しました。
彼らは、感謝された参加者にアンケートを行いました。
その結果、感謝された人がまた人助けをした理由は、自分の手助けが役に立ったことを知れたからでした。
多くの参加者が、自分の手助けが相手の役に立ったかどうか感謝されるまで確信がなかったのです。
つまり、感謝されることで初めて相手から評価されていることを認識でき、それによって安心して手助けを継続できるようになるのです。
また、手助けを評価していることを相手に伝えるのは、傍観者効果を克服する観点からも重要だと言えます。
(傍観者効果についてはこちらを参照してください。)
傍観者効果の研究者は、人が誰かの手助けをするためには次の5つの条件を満たさなければならないことを示唆しています。
- 援助者が発生している事象に気づく
- 援助者が発生している事象を緊急事態として解釈する
- 援助者が発生している事象に対して責任感や使命感を感じる
- 援助者が発生している事象を好転させるスキルや能力を持っていると自分で感じられる
- 援助者が、誰かから強制されるのではなく、自発的に誰かを助けることを選ぶ
つまり、手助けを評価していることを相手に伝えることによって、4つ目の条件を満たすことができるのです。
また、間接的には3つ目の条件や5つ目の条件にも効果的でしょう。
ちなみに、傍観者効果を克服するのに有効な方法としては、他にも次のような方法があります。
- 援助者と個人的な関係を持つこと
- 援助者に共感してもらうこと
感謝された人は感謝した人以外にも親切になるのか
次に2番目の実験を紹介します。
2番目の実験では、誰かから感謝された人は、感謝した人以外にも手助けする可能性が上がるのかどうかを調査しました。
1つ目の実験の後、参加者は別の人から同様の依頼を受けました。
その依頼を受けた人の割合は、それぞれ次のようになりました。
- 一つ目の実験で感謝されなかった参加者: 25%
- 一つ目の実験で感謝された参加者: 55%
つまり、感謝の効果は、実際に感謝した人から別の人へと引き継がれることが分かりました。
また、頼みごとを依頼される前に感謝されているかどうかによって、参加者がその依頼の承諾する確率は2倍異なることも分かりました。
感謝の効果はどのような状況でより強力になるのか
1番目と2番目の実験ではメールを使って実験を行なっていたのに対し、3番目と4番目の実験では対面で実験を行いました。
その結果、やはり対面でも感謝された参加者の方が依頼を受ける確率は高かったです。
しかし、面白いことに、対面よりもメールを使って行なった実験の方が、感謝の効果は約2倍大きいことがわかりました。
これは、感謝の効果は状況によって異なることを示しています。
これらの状況における重要な差異は、参加者にとって、対面よりもメールの方が依頼者に関する情報が少ないということです。
人は、相手に関する情報が少ないと、より相手の言動に注意を払います。
そのため、参加者は自分の手助けが相手の役に立てたのか気になっていたのです。
そうした状況で、自分の手助けが相手に感謝されていることを知ると、その感謝の効果は、不安に思っていた分、より強力になるということです。
なので、助けてくれる人が自分のことをよく知らない場合は、その人に感謝を伝えた方が次のお願いにも応えてくれやすくなります。
例えばリモートワークするときなどは、特に一緒に働く人に感謝を伝えた方が良いでしょう。
また、別の研究では、男性と女性で、人助けをするかどうかの意思決定プロセスが異なることが示されています。
通常、手助けを行うかどうかの選択には次の3つの要素に依存していると言われています。
- 理性的な判断
- 感情的な判断
- その人が持つ道徳的な信念
この研究では、これら3つの動機づけ要因がどのように相互に作用するのかについて調査しました。
学生264名を対象に実験を行なった結果、次のことがわかりました。
- 感情が理性的な判断にバイアスをかける。
- この効果は男性よりも女性の方が強い。
- 女性は、感情によるバイアスをその人が持つ道徳的な信念によって緩和させようとする。
つまり、この結果は、男性と女性で手助けするかどうかの意思決定プロセスが異なることを示しています。
他の人を助けるかどうかの判断は、男性は出来るだけ理性的に判断しようとするのに対して、女性は感情や道徳的信念も踏まえて判断するようです。
なので、相手が何に基づいて判断するのかに応じて感謝の伝え方を調整した方が、またその人から助けてもらえる可能性が上がるかもしれません。
参考にした科学論文
引用元 | Grant & Gino, 2010 |
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研究機関 | University of Pennsylvania et al. |
掲載ジャーナル | Personality and Social Psychology |
研究が発表された年 | 2010 |
引用元 | Wan et al., 2018 |
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研究機関 | Zhejiang Normal University et al. |
研究が発表された年 | 2018 |
まとめ
- 感謝を伝えると、また助けてもらえる確率が2倍上がる。
- 感謝を伝える時は、相手の手助けが役に立っていることをきちんと伝えてあげることが重要。
- 感謝の効果は、実際に感謝した人に対してだけでなく、別の人にも発揮される。
- 感謝の伝え方は、相手に応じて調整した方が、また助けてもらえる可能性が上がる。
- 助けてくれる人が自分のことをよく知らない場合は、より丁寧に感謝を伝えた方が良い。
- 助けてくれる人が男性の場合は、理性に訴えかけるように感謝した方が良い。
- 助けてくれる人が女性の場合は、感情に訴えかけるように感謝した方が良い。