今回のテーマは傍観者効果です。
どういう状況時に傍観者効果を発動してしまいやすいのかについて紹介します。
また、傍観者効果の原因と対策についても言及します。
それでは、次の流れで説明していきます。
- 傍観者効果とは何か
まずは傍観者効果とは何かについて理解しましょう。 - 人はどういう時に傍観者になりやすいのか
次に、どういう時に傍観者効果を発動してしまいやすいのかについて具体的に理解しましょう。
実は、人は、他にも人が複数存在する時に傍観者効果を発揮してしまいやすいことがわかっています。 - 傍観者効果の原因
傍観者効果の対策を紹介する前に、その原因について説明します。 - 傍観者効果を軽減する方法
そして、最後に傍観者効果を軽減する方法を紹介します。 - 今回参考にした科学論文の紹介
傍観者効果とは何か
傍観者効果とは、自分が他人を助けてあげるべき状況にもかかわらず、周囲に他にも人がいることによって、それが抑制されてしまう集団心理のことをいいます。
他の人の存在が、緊急時における私たちの援助行動を阻害するという驚くべき人間の特性です。
傍観者の数が多ければ多いほど、その中の一人が困っている人を助ける可能性は低くなります。
一方、他の傍観者がほとんどいないか、全く存在しない場合には、人は援助行動を起こす可能性が高くなります。
人はどういう時に傍観者になりやすいのか
それでは、人はどういう時に傍観者になりやすいのかについて紹介します。
答えは、周りに人が多くいる時です。
その場にいるのが自分だけであれば援助行動が行われる確率が高くなり、反対に、周囲にいる人が多ければ多いほど援助行動は抑制されます。
今回紹介する科学論文では、学生にグループディスカッションに参加してもらい、議論の最中に参加者の1人が発作を起こすという実験を行いました。
具体的な実験の手順は次の通りです。
- グループディスカッションの建前で、被験者が集められた。
- 被験者は2名・3名・6名の3つのグループに分けられた。
- 被験者はそれぞれ1人ずつ個室に通され、マイクとインターフォンを使って順番に発言するよう説明を受けた。
- 被験者たちは、お互いのことが物理的に見えない状態でグループディスカッションを行った。
- グループの一人が発言中に突然発作を起こし助けを求めるものの、発言の持ち時間が終了し、マイクが切れてしまった。
- 研究者たちは、被験者が発作を起こした人を助けに行くのかどうかを調査した。
また、被験者が発作を起こした人を助けに行く場合は、助けに行くのにかかる時間を測定した。
結果は以下のようになりました。
助けた人の割合 | 助けるまでにかかった時間 | |
---|---|---|
グループメンバーが他に自分しかいなかった場合 | 90 % | 約40秒 |
グループメンバーが他にもいた場合 | 40 % | 約120秒 |
この研究結果から、人は一人でいる時よりも周りに人がいる方が行動を起こさないことがわかりました。
傍観者効果の原因
傍観者効果が生じる原因としては、「責任の分散」「聴衆抑制」「多元的無知」などが考えられています。
それぞれどういうことか説明しましょう。
- 責任の分散
自分がしなくても誰かが行動するだろうと考えてしまうことです。
また、他者と同じ行動をすることで責任や非難が分散されるだろうと考えてしまうことも責任の分散に当てはまります。
集団の規模が大きくなるほど、この傾向は強まります。
では、誰も行動しなければ自分が行動するのでしょうか。
実はその場合も行動しないことがあります。その理由が次にあたります。 - 多元的無知
これは、自分が直感的に異常事態と感じていても、周囲の人が何も行動していなければ特に異常な事態ではないのだろうと誤って判断してしまうことです。
人は、事態が緊急かどうかを自分で判断しにくい時、同じ状況にいる他者の様子から判断する傾向があります。 - 聴衆抑制
これは、重大な局面で責任を負うことを回避して、他者を当てにする傾向のことです。
行動を起こして失敗してしまったら他人からネガティブな評価を受けるのではないかという不安から、行動が抑制されてしまいます。
傍観者効果を軽減する方法
傍観者効果への有効な対策は、あたかも自分が問題を目撃した最初の人、または唯一の人であるかのように振る舞うことである。
具体的には、なんでも良いのでまずは声を上げることが重要です。
例えば、「警察を呼ぶぞ」「おい、何が起こっているんだ」「おい、どうした」などでも大丈夫です。
あなたがそうするだけで、他の人も行動を起こしやすくなります。
こうした行動を起こすコツは、その問題を目撃しているのは自分だけかもしれないと思うことです。
また、必ずしも困っている人を直接的に助ける必要はありません。
他の傍観者にお願いするという人助けの選択肢もあることを認識していると行動しやすくなります。
傍観者効果は、こうした意識も持ち方で軽減することができます。
ぜひ試してみてください。
参考にした科学論文
研究機関 | Princeton University et al. |
---|---|
掲載ジャーナル | Personality and Social Psychology |
研究が発表された年 | 1968 |
引用元 | Darley & Latane, 1968 |
まとめ
- 傍観者効果とは、自分が他人を助けてあげるべき状況にもかかわらず、周囲に他にも人がいることによって、援助行動が抑制されてしまう集団心理のことをです。
- その場にいるのが自分だけであれば援助行動が行われる確率が高くなり、反対に、周囲にいる人が多ければ多いほど援助行動は抑制されます。
- 傍観者効果が生じる原因としては、「責任の分散」「聴衆抑制」「多元的無知」などが考えられています。
- 責任の分散
これは、自分がしなくても誰かが行動するだろうと考えてしまうことです。 - 多元的無知
これは、自分が直感的に異常事態と感じていても、周囲の人が何も行動していなければ特に異常な事態ではないのだろうと誤って判断してしまうことです。 - 聴衆抑制
これは、行動を起こして失敗してしまったら他人からネガティブな評価を受けるのではないかという不安によって行動が抑制されてしまうことです。
- 責任の分散
- 傍観者効果への有効な対策は、あたかも自分が問題を目撃した最初の人、または唯一の人であるかのように振る舞うことです。
- また、必ずしも困っている人を直接的に助ける必要はありません。
他の傍観者にお願いするという人助けの選択肢もあることを認識していると行動しやすくなります。