遅刻した時に言い訳をすべきかどうか(University of Nebraska, 2019)

ビジネス

研究の目的と背景

人は誰しも遅刻してしまうことがあります。
遅刻に関しては、過去の研究によって次のことがわかっています。

  • 遅刻すると、対人関係が悪化したり仕事のパフォーマンスが低下したりする。
  • 遅刻した時にどんな言い訳をするかによって、他者がその遅刻に対してどのように反応するかが左右される。

今回の研究では、以下を目的として、さらに遅刻に関する研究を発展させた。

  1. 遅刻した時に周囲の否定的な反応を減らすのに最も効果的な対応をさらに明確にする。
    過去の研究では、遅刻しても遅刻したことを認めない場合に周囲がどんな反応を示すのかがわかっていない。
    そのため、遅刻した時の対応として以下のパターンを実験で比較した。
    • 言い訳をする
    • 謝罪をする
    • 遅刻したことを認めない
  2. 遅刻した人の振る舞い以外の要因が遅刻したことに対してどう影響するのかを明らかにする。
    この研究では、以下の要因が遅刻にどう影響するかを調べた。
    • 周囲のメンバーが遅刻したことに対して文句を言うかどうか
    • 遅刻した人に遅刻歴がどれくらいあるか

研究方法

研究のタイプ観察研究
実験対象558人のビジネスマン
実験概要
  1. 実験参加者に、ある会社で行われた会議の様子を撮影した動画を見てもらった。
    動画の内容は12パターンある。
    どのパターンでもある社員が会議に10分遅れてくるが、そのあとの展開がそれぞれ異なる。
    例えば以下のような展開がある。
    • 同僚が遅刻に対して文句を言う
    • 同僚が遅刻に対して文句を言わない
    • 遅刻した人が同僚に謝る
    • 遅刻した人が同僚に言い訳をする
    • 遅刻した人がいつも遅れてくることを同僚が説明する
    • 遅刻した人が普段は遅刻しないことを同僚が説明する
  2. 動画を見た参加者たちに以下のような質問をする。
    • 遅刻者の仕事ぶりを社員がどう認識すると思いますか?
    • 従業員が遅刻者をサポートする可能性がどの程度あると思いますか?

研究結果

  • 言い訳をしなかった場合と比較して、言い訳をした方が仕事のパフォーマンス期待値が高く評価される
  • 言い訳をしなかった場合と比較して、言い訳をした場合の方が周囲からサポートしてもらえる可能性が高い
  • 言い訳と謝罪を両方すると、周囲からサポートしてもらえる可能性が最も高くなる
  • 遅刻に対して同僚たちが文句を言わない場合、同僚が不満を言う場合よりも仕事のパフォーマンス期待値が高く評価される
  • 遅刻常習者であっても、遅刻の言い訳をした方が仕事のパフォーマンス期待値は高くなる。

考察

遅刻した時は、謝罪と言い訳を両方ともするのが最も良い対応方法です。
そうすると、仕事のパフォーマンスの期待値を最も高く保てて、かつ、周囲からのサポートも得られやすくなります。

言い訳とは、出来事に対する個人的な責任の認識を減らすことを目的として、自分の行動を自分勝手に説明することである。
そして、言い訳は、行動の原因を自分では制御できない外部の原因に移すことによって機能する。
そうやって言い訳を機能させられると、他にも以下のようなメリットが得られることが過去の研究からわかっています。

  • 個人の自尊心のレベルが向上する
  • 不安が軽減する
  • うつ病やネガティブな感情が軽減する

リファレンス

参考論文Joseph et al., 2019
研究機関University of Nebraska
掲載ジャーナルBusiness and Psychology
Copied title and URL