研究の目的と背景
過去の研究から、人間は他人の裕福さや貧しさにとても敏感な生き物であることがわかっている。
今回の研究では、能力を判断するときにも、私たちは他人の裕福さを判断指標として使うのかどうかを研究した。
また、裕福さを能力の判断指標として使う場合、その傾向がどのくらい強いのかを研究した。
研究方法
研究のタイプ | ランダム化比較試験 |
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行なった実験数 | 9つ |
実験概要 |
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研究結果
- 裕福そうな服を着ている人の方が、能力が高いと判断されやすかった。
- 実験参加者たちは、写真を見てからたったの0.1秒で能力を判断した。
- 実験参加者が写真を見る前に「この写真の人は裕福なんですよ」と伝えても、参加者はファッションで能力を判断した。
- 同じ人が服を変えた場合でも、実験参加者たちはファッションで能力を判断した。
- この研究では、他人の能力を服装から判断するバイアスを克服するために色々な手段を講じたが、どれも効果的ではなかった。
考察
通常、バイアスを克服するには、以下のような手段が有効である。
- バイアスに気づく
- バイアスを克服するための時間を持つ
- バイアスを克服する事に集中する
しかし、この実験では、これらのどれを試してもバイアスを取り除くことはできなかった。
つまり、それだけこのバイアスが根深く人間の脳にプログラムされているということだ。
確かに、瞬時に相手の裕福度を見抜いたほうが生存には有利だ。
もしこのバイアスを取り除きたい場合は、人の外見を見ないで、紙面の情報だけで能力を評価するのが良いだろう。
実際、学者は、面接をせずに候補者の能力を判断した方が優れた人を採用できることがわかっている。
つまり、バイアスを克服するのではなく、バイアスを回避した方が効果的だということだ。
リファレンス
参考論文 | DongWon et al., 2019 |
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研究機関 | New York University et al. |
掲載ジャーナル | Nature |