目標は公にしない方がコミットできる(New York University, 2009)

成功

結論

目標を誰かに共有すると、コミットメントが下がってしまうことが明らかになりました。その理由は、目標を誰かに披露することによって、ある種の達成感を感じてしまうからです。まだ目標を達成していないにもかかわらず、目標について話しただけで目標を達成したかのような満足感を感じてしまうということです。実際、今回紹介する研究では、目標に対する進捗が同じくらいの被験者を目標を公表したグループと公表しないグループに分けて実験を行いました。すると目標を公表した被験者は、もう一方のグループよりも、より目標達成に近づいているように感じていました。つまり、目標を公にすると、あたかもそれを達成したかのような錯覚に陥ってしまい、その結果コミットが弱まるということです。

この手法を実践するときのコツ

よくある目標達成のアドバイスとして、目標を公表すべきといったことが挙げられます。そうすることで、目標達成へのコミットメントを向上させることを狙ったアドバイスです。もちろん、目標を公表すると、その結果も説明しないといけなくなります。また、人間は一貫性を好むため、公表した通りに目標を達成したくなるかもしれません。これらの観点から、目標を公表すべきというアドバイスは理論的には正しいでしょう。

しかし、実際にそのアドバイスに従うとどうなるのでしょう。それを検証したのが今回の研究の実験です。その結果、目標は公にしない方が目標達成へのコミットメントは向上するということが分かりました。このように、理論と実践で相反する結果になることはよくあります。人からのアドバイスや理論を盲目的に信用するのではなく、それが実際に自分にどう作用するのかといった実践的な視点を保つことを心がけましょう。

研究内容の紹介

研究機関New York University
研究が発表された年2009
引用元Gollwitzer et al., 2009

研究概要

この研究では、まず3つの実験を行い、目標を公表することと実際に目標に向かって取り組むことの関連性を検証しました。その結果、被験者が目標を他人に共有すると、コミットメントは増えるのではなく、逆に減ってしまうということが分かりました。被験者は、自分の目標を公表すると、その達成に向けてあまり努力しなくなりました。これは、私たちの目標を公にすることは、私たちが意図していることとは全く正反対の効果をもたらす可能性があることを示唆しています。

次に、研究チームは、なぜ目標を公表すると努力しなくなってしまうのかを明らかにするために別の実験を行いました。すると、目標を公表した被験者は、目標達成により近づいていると認識していることが明らかになりました。つまり、目標を公にすることには、あたかもそれを達成したかのような錯覚効果があるというです。

この研究に対する私の見解

目標を口外する場合、その目的は色々あると思います。しかし、自分自身のコミットメントを高める目的で目標を口外するのはやめた方が良さそうです。また、目的を持たずに目標を口外するのは、無意味どころか悪影響を及ぼします。一方、誰かに協力してもらいたいといった目的がある時などは、目標を公表せざるを得ません。目標を公にするかどうかは、目的に対して公表する必要があるかどうかを判断基準とすると良いかもしれませんね。

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