結論
呼吸筋力トレーニング(IMST)を5分間行うことで、次の効果が得られることが分かりました。
- 心臓発作のリスクが下がる
- 身体能力が向上する
- 認知能力が向上する
呼吸筋力トレーニングは、気管支炎、喘息、肺気腫などの肺疾患を持つ人々が呼吸筋を鍛えるために1980年代に開発された手法です。簡単にいうと、呼吸筋を鍛えることによって呼吸をしやすくするトレーニングです。
実は、肺は自ら広がったり縮んだりすることができません。肺の周りの筋肉が動くことで肺が広がったり縮んだりして私たちは呼吸をすることができます。
このような呼吸に関わる筋肉を総称して呼吸筋といいます。呼吸筋には、ろっ骨の間にあるろっ間筋やお腹の中にある横隔膜などがあります。
こうした呼吸筋が年齢と共に衰えると、少し運動しただけで息苦しくなったりします。
しかし、呼吸筋を鍛えることで深い呼吸ができるようになります。そうすると、全身に酸素が十分に行き渡流ようになり、疲れにくくなったり集中力が高まるなどの効果が得られます。
それでは、具体的なトレーニング方法を紹介します。
この手法を実践するときのコツ
今回取り上げる研究では専用の機器を用いてトレーニングを行っていますが、ここではそうした機器を使わないでできるトレーニング方法を2種類紹介します。
まずは、胸の筋肉を伸ばす運動です。手順は次の通りです。
- 足を肩幅に開いて立ち、両手を胸の上に置きます。
- ゆっくりと息を吐きます。
- 息を吐き切ったら、ゆっくりと鼻から息を吸いながら頭を後ろへ倒します。
- 息を吸いきったら、ゆっくりと口から息を吐きながら、頭を元の位置に戻します。
- これを5分間続けましょう。
次に、横隔膜を鍛える運動です。手順は次の通りです。
- あおむけになり、いすに足を乗せる。
- お尻の下にバスタオルを敷き、腰を床から10cmほど持ち上げる。
- 太ももが床と垂直になるように調整する。
- この姿勢を保ち、胸とおなかが同時に膨らむよう意識しながら、5分間深呼吸を続ける。
これらのトレーニングは、非常に簡単に行うことができます。なので、長時間の激しいトレーニングが苦手な人はぜひ試してみてください。
研究内容の紹介
掲載媒体 | FASB Journal |
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研究が発表された年 | 2019 |
引用元 | Craighead et al., 2019 |
研究概要
この研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者を集めて実験を行いました。研究者たちは被験者たちに呼吸筋力トレーニングを行ってもらい、その効果を追跡調査しました。その結果、1日あたり約5分間の呼吸筋力トレーニングを6週間続けるとより質の高い睡眠ができるようになることが分かりました。さらに、認知能力の向上や血圧低下の効果も見られました。血圧低下の効果に関しては、有酸素運動をするよりも2倍高い効果でした。
この研究に対する私の見解
毎日30分有酸素運動をすると血圧が下がるとよく言われますが、実際にこのアドバイスに忠実に従う人は全体のたった5%だそうです。一方、中高年者の65%は高血圧に苦しんでいます。このギャップを埋める手段として、呼吸筋力トレーニングは非常に有効だと思います。習慣的に有酸素運動をしていない人は、この方法を試して見てはいかがでしょうか。